実際に自分の家のプランニングをしてみると実感されると思いますが、なかなか思いどおりの間取りはできないものです。プランニングのコツを教える雑誌や本もたくさんありますが、家族それぞれの希望をすべてかなえることは大変です。これは、建築士でも同じこと。施主の希望と自分の考えを実現することは、いつも大変だと実感しています。それに加えて、家相を取り入れるとなると、もっと制約が増えてしまうことになります。「あれもだめ」「これもできない」では、楽しいはずの家づくりが苦痛になってしまうでしょう。家相の教えでは、鬼門や家の中心を大切にすること、採光と通風に恵まれた快適な家を目指すことなど、いくつかのポイントがありますが、もうーつ大切なのは、プランニングにも、家族それぞれの家づくりへの「想い」を込めることです。「とにかく、日当たりのよいダイニングにしたい」とか「使いやすいキ ッチンが欲しい」など、どんな希望でもいいです。
私も、プランニングの際には、必ずこのことを実践しています。想いの込め方にもいろいろありますが、まず家族一人一人の希望を、一つずつでもかなえていくことから始めます。今まで、たくさんの住宅を拝見してきましたが、印象に残った家には、すべてこの想いを強く感じることができました。本当に家相のよい家は、「家族が健康 で、幸せに暮らしたい」という想いがあふれている家です。 建築現場でも感じることですが、想いが強く込めら れている建物は、どこか違います。同じ材料を使って、同じ設計の家を建てても、大工が違えば違う家になります。腕の差だけではなく、想いの差のほうが大きく、気合の入っていない職人の現場は、空気にも緊張感がない。 現場の緊張感を生み出すためには、プランニングにも想いが込められていなければなりません。現場にも、この想いは必ず伝わります。家に対する「こだわり」は、何に持ってもいいです。フローリングでもいいし、屋根瓦を吟味してもいいです。キッチンの収納でも、書斎でも、勉強部屋でも何でもいいです。とにかく、家が完成したときに、友人たちに熱く語れるこだわりを持ってほしいです。
私のこだわりは、もちろん家相です。建築士として、プランニングの細部にも気を使いますが、家相に対して妥協をしないこと、これが一番のこだわりだと思っています。理由は簡単。施主の健康を考えれば、家相に妥協などできません。新築やリフォームは大変な作業です。お金はかかるし、悩み事も尽きないでしょう。途中で投げ出したくなることもあると思います。プランニングに想いが込められていると、気力も長続きするはずです。建築現場へも、そんな想いを持って必ず出かけて欲しいと思います。大工や職人に想いが伝われば、きっとよい家ができるはずです。
家相建築設計事務 佐藤秀海